宇多田ヒカルが感じた歴史的使命感 小袋成彬、分離派の夏
小袋成彬は1991年生まれ。2018年に「分離派の夏」でデビューしている。
デビューアルバム「分離派の夏」は宇多田ヒカルがプロデュースした事でも話題を呼んだ。
オルタナティブR&Bを彷彿とさせるメロウなサウンドに、文学的で繊細な歌詞を紡ぐ。
収録曲の「Lonely One」では、宇多田ヒカルがゲストボーカルとして参加している。
小袋は大学卒業後、就職に失敗した後、好きな事をするという信念の元、レーベルを作り、作曲、プロデュースを志した。
全くの音楽的知識、経験も無い状態からのスタートであるが、これまでに自分を構成してきた大量の音楽に支えられ、ビジネスとして大きくなっていったのだ。
孤高のクリエイター
設立した会社はプロデュース会社として評価を得、「水曜日のカンパネラ」「OKAMOTO’S」等、著名なアーティストからの依頼、CMの作曲等をこなすようになった。
しかし、孤高のクリエイター小袋成彬は、自分のしたい事をするという強い信念がある。
求められる注文に答える日々に疑問を感じ、自分のためだけに音楽を作る事に決める。
小袋の歌詞は心の機微、日々の揺らぎを音楽に昇華したものが多い。内省的な歌詞を心象風景にして歌い上げる。
ビートはシンプルで様々な要素が織り混ざっている。
オルタナティブ、R&B、ゴスペルやアンビエント等、ストリングスも印象的でクラシカルだ。
歌声は優美で繊細、ハイトーンは孤独や気高さを感じる。
宇多田ヒカルに「この人の声を世に送り出す手助けをしなければならない」という歴史的使命感を感じさせたほどだ。
商業的ではなく、自分のためだけに作る音楽だからこそ、刺さる。
「イントロは短め」で、「キャッチーなメロディ」、「流行りのコード進行」とは無縁。
飾らない自分のためだけに作った音楽が小袋の音楽なのだ。
「分離派の夏」には小袋の友人2人の「語り」が収録されている。
息づかいまでも聞こえてくるリアルで生々しい語りである。
語りパートから始まる曲の流れは、音楽の偉大な先人達が採用してきたスタイルの踏襲である。
セカンドアルバムはエレクトロニック要素
ファーストアルバム「分離派の夏」から約1年8ヶ月を経てリリースされたセカンドアルバム「Piercing」は完全セルフプロデュースだ。
前作の雰囲気を残したまま、エレクトロニックなアレンジもされており、また違った側面を見せるアルバム。
今宵も小袋成彬が描く心象風景に酔いしれる。
この記事へのコメントはありません。