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凍った脳みそから読み解くアジカン後藤正文

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギター、ゴッチこと後藤正文の著書である「凍った脳みそ」。

タイトルからは内容を想像する事ができないが、その内容はゴッチが自身の音楽スタジオを作るまでの道程をユーモアたっぷりに記している。

タイトルの凍った脳みそとは、そのスタジオに冠した名前、「コールド・ブレイン・スタジオ」からきているのだ。

本書はゴッチが自身の音楽スタジオを作るまでの壮大な冒険書である。

 

紛れもなく音楽書であり、スタジオ作りの冒険譚でもある

本書は音楽スタジオ作りの話であるが、音楽的知識がない読書でも読み進める事ができる。ゴッチ自身も、スタジオ作りのイロハが全くわからない所から物語が始まるからだ。

音楽スタジオ制作の過程を、本書を通じて一緒に擬似体験する事ができる点で、本書は紛れもなく音楽書である。

しかしながら、読後感は壮大な冒険譚を読んだ感覚である。

ゴッチは音楽スタジオを作り上げる道程で、予想だにしない様々な困難、壁にぶち当たるのだが、その状況をユーモアたっぷりの妄想と比喩表現で表している。

目まぐるしい場面展開、一つの結論に着地するまでに空中四回転を決めるスタイル。

冒険譚という読後感はこういった事に起因している。

もちろん紛れもない音楽書であるため、音へのこだわりも随所に見られる。

良い音楽を作りたいと思った瞬間から、良い音楽とは何かという根源的な問いが押し寄せ、今日もまたゴッチは音響に頭を悩ませているのだ。

ゴッチが曲だけではなく、音の沼の住人である事が理解できる。その音へのこだわりの一端を知る事で、彼の楽曲をじっくり聴いてみようと興味が湧く。

アジカンの名盤アルバムとして名高い「ソルファ」は、2004年にリリースされているが、2016年に全く同じ収録曲で「再録ソルファ」としてリリースされている。

再録した理由にも納得。音へのこだわりからだ。

 

後藤正文を構成するロックスター

冒頭、タイトルにもなっている「凍った脳みそ」はゴッチの音楽スタジオ「コールド・ブレイン・スタジオ」の事である事に触れたが、この名前はどこからきているのか。

BECKの曲名からきている。自身の音楽スタジオの名前にするほどにはBECKが好きである。

コールド・ブレイン・スタジオの中には、自身のモチベーションを上げるために、大好きなWeezerやOasisのポスターを飾っている。

自身の音楽的趣味趣向については、SNSでも比較的よく発信しているため、一度チェックして見る価値はある。

 

ドキュメンタリー

各章のタイトルも一見、何の話をしているのかわからないものが多い。

「飲料数で尻を洗うのは善か」、「若者を助け、徳ポイントをためるのだ」等々、音楽スタジオ制作の話とどんな関係があるのか考えながら読み進めていって欲しい。

自身の音楽スタジオを作り上げていく様を、物件探しから形になっていくまで赤裸々に描いている。ユーモラスな比喩表現で想像力を掻き立てられ、読了感は壮大なドキュメンタリーだ。

 

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Literary&Essay